『されど罪人は竜と踊る Assault』

されど罪人は竜と踊る Assault (角川スニーカー文庫)

されど罪人は竜と踊る Assault (角川スニーカー文庫)

瀕死の重傷を負い路上で死を待つだけのガユスを救ったのは、攻性咒式士の一団ジオルグ・ダラハイド事務所の面々だった。
そのまま事務所の一員となったガユスを待ち受けるのは、愛おしい恋人と、信頼する仲間との優しく揺らがぬ幸福の日々。
ガユスとクエロ、失われた黄金の時代が語られる。



友愛に満ち溢れ、希望に富み、恐れるものなど何もない黄金の日々も、最後には無惨に砕け散ると知っているから、どれだけ楽しい一瞬であっても物悲しい気持ちになる。
また各章の冒頭、あるいは終わりに語られるガユスの独白が哀愁を漂わせていて、尚一層この物語が過ぎ去った過去なのだと実感させてくれて実に痛い。
オルグ事務所崩壊についての詳細な事件は語られていないので多少消化不良な気もするが、上げて落とすのがこのシリーズのセオリーのようなので今後に期待。


ところで、痛いといえば男性諸氏に満遍なく股間を押さえさせる長い長い拷問描写である。
場面的には冗談なのだが正直ドン引きですよ……。
男性主体のエロ描写が幾つか盛り込まれたことに対する、女性読者へのサービスなのか?!
なにもそこまで切り刻まんでも……と閉口せずにはいられない。
まぁ、後半も結構な割合でグロかったけどさ。


他に幾つか。
終盤のジオルグによる謎解き――というか真相解明や黒幕との邂逅は、そのまま本編のガユスの役割に繋がっていて、なるほどガユスの語りは師匠譲りかと納得。
ついでに<隠者>に予言されるガユスの未来も興味深い。
人中の竜ってのは、一人はクエロだとして他はモルディーン枢機卿長とかだろうか? 
――既刊を読み返したら恐ろしい竜ばっかりだった……やれやれ。
過去ももちろんだが、やはり本編の続きが待ち遠しい。(といいつつ短編が積んだまま)