『聖殺人者』

聖殺人者

聖殺人者

舞台は『悪の華』から一年後の新宿歌舞伎町。
亡き叔父の店を引き継いだガルシアは、店を人に任しシチリアへの旅立ちを目前にしていた。
そんな折、店に一人の女がやって来る。
彼女を追う新興組織南雲組。
そしてイタリアからの刺客ジョルジオ。
再び異国の地で血の華が咲き乱れる。



若干物足りないというか、前作に比べて敵役の印象が弱い。
前作の宿敵不破にあったような凄みが今回の奴等にはない。
やってる事の変態性と嫌悪感では海豪の方が上なんだが、文中でガルシアが言うようにやっぱり不破とは格が違う。
イタリアからの刺客もがんばってはいたが、いかんせん裏の主人公みたいな扱いだったし。
宿敵といえるような相手がいないかわりに、ゲスな変態が相手だったというのが若干スケールダウンしたと思う原因かもしれない。


あと、抗争そのものが回避可能だったという事もある。
前作では傭兵を雇うための資金作りという意味で、戦わざる得ない状況にあったが、今回の争いは別に絶対に戦わないといけないような話でもなかった。
事件の発端はガルシアが後任の経験のために厄付きの女を雇ったことであり、マフィアのプライドに拘って女を渡さなかったことにあるからだ。
渡さないと宣言した後も普通にホステス達を家に帰して被害が拡大したりで、なんかもう自業自得と言ってしまいたくなるくらい注意力散漫な展開。
自分から喧嘩を売り、下手を打っておいて復讐も何もないだろ……というのが正直な感想である。


明らかに続編を匂わせるラストシーンを見やりつつ、いつかこの男に安息の時は訪れるんだろうかと考えた。
復讐を遂げた後はどうするんだ、ガルシア。