『されど罪人は竜と踊るⅦ まどろむように君と』

ギルフォイル事件以後のアシュレイ・ブフ&ソレル事務所が手掛けた事件が描かれる、暗くて苦い短編集。



辛い。
苦い。
チクチクチクチク自分の嫌な記憶やら程度の低さやらが刺激され続ける。
あーもう堪らなく楽しいな、こんちくしょー!!


・黄金と泥の底
金に群がる人の浅ましさ。
金に命を左右される人の愚かで寂しい結末。
露骨だなと思いつつ、でもそうなんだよなと納得しウンザリする。


・しあわせの後ろ姿
男って生き物は本当に愚かで救いようがない。
いつまでも別れた女を忘れられず、いつか戻ってくるかもしれない――などとアホな事を期待してやがるのだから。
でも現実にそんなことが起きるはずもなく、どこかで別の誰かと幸せにやってるに決まってる。
死んだ男のしたことはただの逆恨みでしかないけれど、それでも俺はそいつに共感してしまう。
そんなこんなで、身勝手で愚かな男である自分を再確認……。


・三本脚の椅子
真に素晴らしい才能を前にしたとき、自分が必死になって積み上げてきた全てが一蹴され、自分の存在そのものが揺らいでしまう。
それでも腐らず積み上げることが出来たなら、大成してもしなくてもそいつは探求者として幸福かもしれないなと思う。
ギギナが椅子について語る場面には笑う。


・優しく哀しいくちびる
メチャクチャくだらない軽口、愉快と陰湿紙一重の嫌がらせ、そして罵詈雑言の応酬。
これぞ著者の真骨頂というべきか。
陰惨な話ばかりの短編集の中でこの話は一服の清涼剤……になるはずなのだが、なんだろうねこの黒いオーラは?


・翼の在り処
人中の竜が勢揃い。
圧倒的すぎて特に思いつくことがない。